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毎日思うこと、感じることを日々の時間(とき)の中で綴ります


by reem-akemi
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Baghdad Burning 死体安置所…

バグダッドバーニングbyリバーベンドのブログ、3月28日を送ります。

TVニュースではイラクの車両僕弾の話はよく出るが、今日リバーが記述している遺体の話にふれることはあまりない。このような拷問された死体が発見されるようになったのは2005年5月頃から。何も解決されないまま1年がたとうとしている。

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2006年3月28日火曜日
死体安置所…

昨夜遅く、イラクのTVチャンネルをバチバチまわしていた(時々6チャンネルくらい見ている)。それは電気がきている間の私の深夜の習慣ーイラクのTVで何をやっているのかを見ることが。一般的に言えば、イラクのTVチャンネルには真の意味での‘中立'的なチャンネルはまだない。最もポピュラーなものは、現在勢力を競うそれぞれ異なった政党がバックにある。このことは選挙の直前に明らかになった。

私は、鳥インフルエンザに関するレポート、別のチャンネルの様々なラトミヤからの断片のモンタージュ、エジプトのホームドラマの3つから決めようとしていた。が、多くのイラク人がまぁまぁ中立だと考えているシャルキーヤ・チャンネルで私の手が止まった (選挙の間、ここはアラウィを支持していた)。私は画面の下のほうに流れるニュースの小さい見出しを読んだ。いつものことだけど、バグダッドの地域での迫撃砲があり、こちらに米兵の死体、あちらに怪我人…12 人のイラク人の死体がバクダッドで見つかったことなどなど。突然、そのひとつが私の注意を引いた。私は自分が間違って読んでいないかどうか、ソファーにちゃんと座り直した。

Eは居間の端に座り、組み立てなおすことができないだろうラジオを分解していた。私は彼を呼んだ。「ここに来て、これを読んでみて。私の勘違いかしら…」と。Eはテレビの前に立って、死体、アメリカ人、および操り人形(傀儡政権)に関する言葉が流れるのを見ていた。待ち兼ねていた新聞記事の項目が出たとき、私はジャンプしてその項目を指した。E.と私は黙ってそれを読んだ。E.も私が感じたと同じように混乱しているようだった。

そこにはこう書いてあった:
「国防省は、その地域を管轄している連合軍をともなわない深夜の軍隊、警察の命令に市民は従わないよう要望します。」

これは現時点でこの国がいかに混乱しているかを表している。

私たちは他のチャンネルに切り替えた。「バグダッド」チャンネル(ムフサン・アブダル・ハミードと彼のグループがバックにいる)には、同じ記事があった。しかし、一般的な「連合軍」と書いてなく、「アメリカの連合軍」となっていた。私たちは他の2つのチャンネルもチェックした。イラキーヤ(ダーワ党シンパ)、フォラート(SCIRIシンパ)は言及していなかった。

それが別のチャンネルでも繰り返されたので、私たちは今日、それについて議論した。

「ねぇどういう意味かしら?」昼食で集まったとき、いとこの妻が尋ねた。

「やつらが夜やってきて家を襲撃したくても、入れる必要はないってことよ。」私は答えた。

「やつらは許可なんて求めてないぜ」とEは指摘した。
「やつらは、ドアを破壊して、人々を連れて行くだけ。忘れたのかい?」

「ねぇ、国防省によれば、私たちはやつらを撃ってもいいってことよね、違う? やつらがしていることは『侵入』で、やつらを強盗か誘拐者と考えることも出来るのよね…」と私は返答した。

いとこは頭を横に振った。「もし家族が家にいるとしたら、やつらを撃つなんてしない。やつらがグループで来るのを覚えているだろ? 武装して大人数で来るんだ。やつらを撃ったり抵抗したりしたら家の中にいる人間を危険にさらすことになる。」

「それに、やつらが最初に攻撃してきたとき、アメリカ人が一緒にいないってどうしてわかるんだ?」 E.は 尋ねた。

可能性をあれこれ考えつつ、私たちはお茶を飲んだ。それはイラク人にとって、始めからわかっていたことを確認したに過ぎない。すなわち、イラク治安部隊が宗教と政党に結びつけられた民兵だということを。

しかし、また、それは面倒な問題に火をつけた。治安状況がとても悪いので、民間人を保護することを担当したトップ2つの省は互いを信じることができない。「アメリカ連合軍」が一緒でない限り、国防省は自らの要員さえ信じることが出来ないのだ。最近では何が起こっているかを理解することが本当に難しい。私たちはイラクの治安について、アメリカ・イラン間の会議の話を聞く。そして、イラクのアメリカ大使はイラク国内の民兵組織に資金を提供したという理由でイランを非難している。昨日、フセイニヤ(コミュニティセンター)に対するアメリカの攻撃で20~30人のサドル民兵が殺されたという主張が今日出ていた。アメリカ軍は、攻撃の責任はそこにいたイラク治安部隊(彼らが絶えず賞賛している)にあると主張している。

これらすべてが、ブッシュと他のアメリカ人の政治家が主張していることーイラク軍と治安部隊は状況をコントロールしているーに矛盾する。いや、コントロールしても、うまく行かないのかも、たぶん。


ここ数週間、バグダッドのいたるところから死体が発見されている。いつも同じような死体がー頭にドリルで穴をあけられ、無数に撃たれ、絞首刑にされたように首を絞められている。民兵たちのやりかただ。犠牲者の多くが治安部隊、警察、特殊部隊によって家から連行された…。そのいく人かはモスクからひとかたまりで連れ去られた。

数日前、私たちは大学に女性のいとこを迎えに行った。大学はたまたま地域の死体安置所のそばにあった。E.、いとこのL.、私は、大学から少し離れた場所に車を停め、車の中でいとこを待った。私は死体安置所の近くの騒動をずっと見ていた。

そこには何十人もの人々ーほとんど男ばかりーが、殺伐とした雰囲気を漂わせて立っていた。何人かがタバコを吸い、他のものは車や軽トラックに寄りかかっていた…。彼らから深い悲しみ、恐怖、あきらめなどさまざまなことが読み取れた。何人もの顔に、恐怖とこれから起こるであろうことに対する不安がみちみちていた。バグダッドの死体安置所の外だけに見られる特別な表情だ。何かを捜し求めるように目は大きく見開かれ血走り、眉を寄せ、顎を固くしめ、口を真一文字にして、しかめ面をしている。死体が列をなしている死体安置所に入っていくときの表情だ。彼らは自分たちが探しているものが見つかりませんようにと祈っている。

いとこは重苦しく溜息をつき、少し窓を開けて、ドアをロックするように私たちに言った。彼は死体安置所をチェックしに行くつもりだった。1カ月前、いとこの妻のおじがお祈りの最中にモスクから連れ去られたーおじはまだ戻っていない。2日ごとに、家族の誰かがおじの身体が運びこまれていないかどうかを見るために死体安置所に行く。「彼が見つからないことを祈ってくれないか …いや、むしろ…僕はただ、このあいまいさがイヤなんだ。」 いとこは、重苦しく溜息をついて、車を降りた。彼が通りを渡って、人込みに紛れて見えなくなったとき、私は心の中で祈りの言葉を唱えた。

Eと私は、まだ大学の中にいるHと、死体安置所に行ったLを辛抱強く待った。何分間も、E.と私は黙って座っていたーこういう状況なので、おしゃべりは不謹慎に思えたのだ。L. が最初にやってきた。私は緊張して彼を見つめ、気付くと自分の下唇をかみしめていた。「インシャラー、彼がおじの遺体をみつけていませんように…」と、私はひとりつぶやいた。車に近づくと、彼は頭を横に振った。彼の顔はこわばり厳しかったが、険しい表情のかげに、ほっとしている様子が見えた。「おじは、ここにはいなかった。ハムドリッラー[神に感謝します]」

「ハムドッリラー」E.と私は一緒に繰り返した。

私たちは死体安置所を振り返った。多くの車の上に、息子、娘あるいは兄弟の死を予測して、簡単で細長い木の棺が置いてある。黒いアバヤを着た1人の女性が狂ったように中に入ろうとして、二人の親族に抑えられていた。3人目の男が、車の上に結ばれた棺を解くために手を伸ばしていた。

「あの女性を見てごらんー息子を見つけたんだ。彼らが息子さんを特定しているのを見たよ。頭を銃撃されていた」 彼女はずっと怒り続けていたが、突然足元に崩れ落ちた。彼女の泣き叫ぶ声が、その日ずっと私の心を占めていた。驚くほど暖かい日だったけれど、私は冷たくなった指を覆おうと袖を引っ張った。

私たちは、深い悲しみ、怒り、失意など様々な場面をずっと見ていた。そして、時々、最も恐れていたものを見つけることなくホッとして死体安置所を出る何人かの人を見た。彼らは(死体安置所の)臭いに目をうるませながら、入っていったときよりわずかに軽い足どりで、死体安置所から愛する者を引き取る不安から一時(いっとき)の猶予を与えられて出ていく…。

リバー@午後9時51分

(翻訳 細井明美)
by reem-akemi | 2006-03-31 09:02 | バグダッド・バーニング